More Than New JACK PURCELL.
人生のジャックパーセル

Vol.4 Yoshiaki Takahashi

誕生から90年を迎えたジャックパーセルは、「歴史へのリスペクトと未来への継承」をコンセプトに、自らのものづくりを見つめ直し、「ジャックパーセル 1935」をローンチしました。このシューズと同じように、ルーツを大切にしながら次の一歩を選び続けてきた人たちに、自身のファッションの遍歴や仕事に対するプライドを尋ねました。紡ぎ出される一つ一つの言葉は、このシューズの魅力と重ねることができます。

できないことを前向きに捉えて
建築家の夢は場づくりの仕事へと

変わらずモデルを続けながら、東葛西にあるこの倉庫の借主として、オープンスペースのような場所を目指して活動しています。美大時代は建築を専攻していたので、建築家として家を建てることが夢でした。けれど、3年生のときに東日本大震災があり、建築業界と社会が分断されている現実を目の当たりにして。ちょうど同じ頃になにか所有した土地に自分が建てたものが残っていることに、どこか負い目みたいなものを感じるようになったんです。何も「建てること」だけが建築家の仕事じゃないのかも、と悩んでいたころに、メンズノンノのモデルオーディションに応募して、グランプリを獲ることができました。昔から愛読していた、僕に影響を与えてくれたメディアについて深く知りたかったし、そこに僕の好きな建築を何かしらの形で表現できるかなって。

メンズノンノとともに過ごした20代は刺激的で、楽しかったです。マスメディアの位置に足を踏み入れたことで、多くの人に何かを伝えるために必要なことをたくさん学びました。打ち合わせの進め方やビジュアル作り、それをどうクリエイターに伝え、ビジョンを共有するか。すごく参考になりました。
モデルの仕事と並行して、内装や店舗のデザインなどの仕事をいただくようになりました。それは建築というより、アーティストの美術活動といった外からの見え方に対する多少の抵抗感を覚えつつ、社会ってそんなものだよね、と割り切る自分もいながら。

そんな活動を続ける中で、3年くらい前に、突然(創作としての)手が動かなくなったんです。自分が考えていることを、人と共有できないと感じる瞬間が増えすぎて。そうして僕は勝手に「一人が好きだ」と思い込んでしまったんですが、コロナ禍でより一人で籠る時間が増え、その間に戦争が始まったりして、学生だった震災の時と同じように、何もアクションを起こせない自分が嫌になり、小さなことでも、自分ができることを考えました。それでも、隣の人を笑わせる、そんな些細なことでしか世の中に抵抗できないけど、それもいいなと思ったんです。そうした時に、建てることではない、場づくりや環境づくりとしての建築に興味が湧いてきたんです。大学の頃は周囲にいろいろなアーティストがいたのに、卒業すると何か分断されたような気がしていて。だからいろいろな人たちが集うコミュニティの場がつくれたら、と思うようになりました。

2年くらい前からこの場所をリニューアルしてから、多くのアーティストと関わるようになって、一人でできる人がいるけれど、僕はそっち側ではなく、誰かの役に立ちたかったと思うようになりました。
結婚をして、子供も授かって、家にあるものも一人では決めたくないし、誰かと話しながら決めていくのが向いていると思ったし、エネルギーをもらえる気がしました。

自分が何もできないと思っていたからこそ、自分にまつわることを全部やろうと、どこかで無理していた頃があったけど、できないことを受け入れることも結構大事だな、と思うようになりました。助けてくれる人がいて、その人のアイデアを頼りにするようになって、規模が大きい案とかも一緒に考えられるようになった。そういう環境を維持したいと最近は思っています。「できない」ということを偶然性に繋げて、楽しんでいる感じです。

自由を柔らかく受け入れるようになって
ジャックパーセルを楽しめるように

ジャックパーセルとの出会いは中学生の頃の曖昧な記憶でしかないですが、確実にカート・コバーンです。そして音楽としてではなく、ファッションとしてのカートを知ったきっかけは<ナンバーナイン>でした。だから同じコンバースでもオールスターより先に履いていたんです。その後に<ディオール オム>が話題になって、スラックスにスニーカーを合わせるスタイルを吸収して。エディ・スリマンに影響を受けたのは、古着でも真似できるところ。お金持ちしかできないメゾンのスタイルではなく、それを自分の手で届く範囲で楽しめる。その足元がずっとジャックパーセルだった感じです。

仕事の話にも共通するのですが、最近は「仕方のないこと」に惹かれています。 以前はいろいろな情報から得たものを自分で表現することにかっこよさを感じていたけど、今は「仕方ないもの」を受け入れることが、結構いいかなって。そこにある服を毎日着ていることも心地よくなりました。身につけているものに「何にも属さない自分」を結びつけられるようになったからかもしれません。若い頃は、日々選んだ服にコンセプトを意識的につけていたけど、今は3日間くらいのコーディネートで2ヶ月くらいまわしていて、力が抜けた感じです。

ジャックパーセルって、オールスターと比べても、やっぱり柔らかい存在ですよね。このスマイルっていうディテールも理由かもしれないけど、ちょっと抜けた印象があって。そういうものをカートとかが履いていたアンバランス感も好きだったんです。一方でオールスターって、かっこいいじゃないですか。なんか”シュッシュッ”としてて。靴紐を気合い入れて結ぶみたいな。オールスター的な人間だった頃も確かにありました。強く、固く生きようとしていたというか。でも今は自由であることを柔らかく求めている気分かもしれません。ジャックパーセルは今までキャンバスしか履いてこなかったので、このレザーは新鮮です。けど、ゆるりと変わっていく自分を大事にしているので、大人になったことだし、レザーを楽しもうと思っています。

とはいえ、真っ白のスニーカーって汚れが目立って落ち着かないんですよ。でも、それも「仕方がないこと」と受け入れながら、新しい履きこなしを楽しめたらいいな、と思っています。

髙橋義明
Yoshiaki Takahashi

1989年生まれ。愛知県出身。武蔵野美術大学在学中に「2011 メンズノンノ専属モデルオーディション」グランプリを受賞し、2019年まで専属モデルとして活躍。現在はビーナチュラルに所属し、モデル活動を続けながら、店舗の内装やエキシビションの空間デザインを手掛けている。またアーティストランスペース「東葛西1-11-6 A倉庫」の借主として、アーティストと共同で企画する展示などを通じ、アートと社会との結びつきを考察している。

STAFF CREDIT
Photography_Asuka Ito
Interview & Text_Masayuki Ozawa (MANUSKRIPT)
Producer_Narumi Yoshihashi (MANUSKRIPT)